破面に愛情、そんな言葉は無用だ。













 「くそっ…」

















グリムジョーは肩を抑えて一つの部屋に入って行った。
ソコには一人の破面がいる。

















 「腕、どうしたんですか?」
 「テメーには関係ない」

















無くなっている腕はきっと廃園された
と考えるのが一番妥当だ。



















 「東染あたりにやられた…ってとこですか。腕、貸して」
 


























グリムジョー何も言わずにそこにいる。
無愛想な彼。
そんな彼にそっと近づく一人の少女。
鬱陶しいといわんばかりの顔をされた。

















 「名前なんて言うの?私は
 「…何の真似だ」
 「別に。だって痛そうだから血止めてあげようと思って」


















は腕の無いほうの方に手を当てる。
グリムジョーは立ち上がり部屋を出て行く。




















 「ちょっと!!傷口!!!」
 「うるせー。おめーには関係ねー」



















凄く冷たい眼差しで見られた。
でも、そんなことは慣れっこ。
は腰に手を当てて仕方ないな、と言いたそうにしていた。
そこでジッっとしているのは性に合わない
彼の後を連いて行くことにした。
彼が歩いたあとには血が垂れていた。













 「ねー、ちょっと待ってよ」
 「連いてくるな」
 「そんな怒んないでくださいよ。それと、名前くらい教えてくれてもいいじゃないですか?」




















彼女はニコニコしながらつい来る。
そんなに俺の傷が見てーのか?
凄くイライラした。






















 「ねー、聞いてる?」
 「うるせー!!」
















グリムジョーはの方に振り向くとケガをしていない腕で首の根元を掴む。
彼女は苦しさから声は出なかった。
だが、彼女の表情からは苦しいなんてことは伝わってこない。
















 「お前に何がわかる?ウゼーんだよ」







グリムジョーはから手を放し、後ろを向け歩き始めた。
は数回咽た。






















 「何もわかんないよ!でも、一人で辛い思いしてたら辛いだけじゃないの?」





















グリムジョーはその場で立ち止まった。
そして、は来た道を引き返そうとした。















 「おい、女」
 
 「?」






呼び止められたは歩くのを止め、振り返った。







 
 「治せるのか?」
 「血止める程度ならできますよ」




















はニッコリと笑って見せた。
グリムジョー、は何も言わずにそこに座った。
その意味は治療しろ、と捉え傍に寄ると手をかざす。

















 「にしても、酷くやられましたね。血が凄い…」
 「…」
 「あっ!あのですね、私は"おい、女"じゃなくて、です」
 「…」
 「グリムジョーさんって何処で寝てるんですか?」


















名前を教えたつもりは無かった。
が、知らないわけもない。
先程までNO.6だったのだから…















 「きっと私の寝床より広いんだろうな〜。いいな〜」



















などと、勝手に話し始める
それを黙って聞く。
どうしてこうもおしゃべりなのかわからなかった。
そして、他の破面なら怖がるだろう、グリムジョーに付きまとうのかもよくわからない。
だが、彼女はただ笑って話しかける。






















 「はい、終わり」








少し額に汗を浮かべた彼女は笑って言った。
傷口は見事に塞がっていた。





 「ふん」
 「ね、どこ行くの?」
 「テメーに関係ない」
 「そうだけど…教えてくれてもいいじゃん?」
 「連いてくんな」
 「だって、暇だし」
 「…」














グリムジョーは一瞬にして、の前から姿を消した。
はふぅ、とため息をついた。



















 「(あの女なんなんだ…)!?」
 「やっほ!連いてきてしまいました」










と笑っているが、自分の跡をどうやってついてきたのか...
霊圧は見た感じでは高いとは言えない。
ましてや、誰かがあとを追ってきたなんて気配すら感じさせなかった。
だが、自分の動く早さについてこれるというのが驚きだった。


















 「凄いね、ココ!! 景色一望できるよ」
 「…一望できても、綺麗なものは何もねー」
 「そうだね。じゃーさ、綺麗な場所に行こ!! 連れてってあげる」








というと、はグリムジョーの手を引く。
グリムジョーはその手を解き、ポケットに手を入れて、後ろから連いて行くことにした。
は「手くらいいいじゃん」と思いながらも、その場所へと向かう。












 「ほら!」






と、彼女が両手を広げて見せたのは、小さなお花畑だった。












 「綺麗でしょ?」
 「…」
 「ココ一面砂漠だから詰まんないなぁ、って思って植えたんだ」
 「どうやって…育てた」
 「どうやってって、こうやって」








はじょうろで水をまく。










 「砂漠で花が咲くわけねーだろ…」
 「咲くんだよ!! ちょっと工夫がいりますが...。
  ねぇ、一緒にお花植えよう?」
 「くだらねぇ」
 「いいじゃん!!ほら」








は目の前に花を持っていくが、パチンと花を振り落とした。











 「何すんの!!」
 「ウゼーって言ってんだ」








はグリムジョーの頬を叩いた。
彼はそのまま姿を消し、にはただ叩いたときの衝撃が残った。
やりすぎたと思ったは、後で謝りにいくことにした。
















日が暮れた頃、グリムジョーのところを訪れる。












 「どうも」
 「…」






返事はなかった。












 「何かリアクションとか欲しいんですけど...まっ、いっか」













グリムジョーの目の前まで移動し、頭を下げる。














 「さっきはごめんなさい。やりすぎた」
 「…」













は様子を見るために少し頭をあげ、上目使いで見る。













 「用が済んだならさっさと帰りやがれ」








ソファーに腰掛けている彼が言う。











 「えー、いいじゃん」







と、言うと図々しくもソファーの空いてるところへと座る。






ふわふわしてる!
だの
座り心地いいだのこうだのと騒いだり、
昔の話をしてうるさかったのが、急に静かになったかと思えば寝ていた。
寝顔からすると、まだ子供じゃないだろうかと思うくらいに無邪気な顔をしていた。
一応気をつかい、毛布をかけてやった。










翌朝、グリムジョーが目を覚ますと彼女の姿はなかった。
ただそこに「また来ます」とだけ書かれたメモが置いてあった。
ついでにいうなら、朝食も用意されていた。
それを食べると、グリムジョーは部屋をあとにする。









「また来る」
とあったが、実際彼は来なくていい、と思っていた。






今日は姿を見なくてもいいかもしれないと思っていた頃、ちょうど顔を出した。











 「やっほ」
 「…」
 「挨拶しようよ」
 「…何の用だ」
 「う〜ん、別に用があったわけじゃないんだけど...あっ!!はい、コレ」










彼女が手渡したのはお花だった。
おそらく彼女が育てたであろうその花は綺麗に咲き誇っていた。











 「いらねー」
 「そういうこと言わないでよ」









は花瓶を探すが、そんなものあるわけもなく
仕方ないのでコップに水を入れテーブルの上に置いた。










 「ほら、かわいいでしょ? 真っ白な部屋にいるよりは、
  少しは色とりどり何かしらあったほうがいいよ」
 「邪魔なだけだ」
 
 「どうしてそういうこと言うかな〜。こんなに頑張って咲いてるのに、ね」









どうしてそこまで花を大切にするのか俺にはよく理解できない。
花なんて枯れてしまえば終わりだろうが...














 「昨日言い忘れてたんだけど、お花畑のこと...誰にも言わないで下さい」
 「…言わねーよ」
 「ありがとう♪」












は少しだけお喋りすると、帰って行った。
何しに来たかわからない彼。
まぁ、そんな彼女も悪くはないと思うのはもう少し先のことで...











翌日も、その次の日も
は毎日グリムジョーのところに顔を出す。

次第に毎日会うのが当たり前のようになってきた。














 「それじゃ、また明日ね」
 「…お前も飽きねー奴だな」
 「アハハ」






と笑って帰る彼女。
毎日毎日色んなことがある中で、彼女と会うことで癒されていたのかもしれない。



























翌日、いつもなら顔を出す時間に彼女が来ない。
むしろ、いつもならかすかに感じる霊圧すら感じなかった。
流石に可笑しいと思ったのか、重たい腰を起すグリムジョー
向かった先は、が作っているお花畑。
そこには、先客がいた。


















 「いたい!」




は悲鳴をあげる。









 「こんなところに花が植えてあるなんてしらなかったぜ」
 「踏まないで!!」
 「うるせっつんだ」
 「いっ…」











の首を握る。
苦しさ故にはそいつの手を外そうとするが、息は出来なくなる一方だ。














 「…放せ」







グリムジョーはの首を掴んでいる手を掴む。











 「ノイトラ...ここで何してる」
 「グリムジョーか...テメーこそ何しに来た。…この女を助けに…?」










ノイトラはケラケラと笑い出す。












 「最近その女と一緒にいるみてーだな、グリムジョー」
 「テメーには関係ねーよ」
 「その様子だとコイツのこと知らないってことだな」
 「…」






はノイトラを睨んだ。








 「まだ、言ってねーか。お前が昔NO.6だったこと…」
 「!?」
 
 「…」






グリムジョーはの方を見たが、はその視線から逃れるように他の方向を見る。

















 「お前を殺すために近づいたんだぜ?」
 「違う!!そんなことしない」
 「失せろ…ノイトラ」
 「女の色気に呑まれたバカな男だな、グリムジョー」









と笑いながら去って行った。














 「違うから!! 殺そうなんて思ってない」
 「じゃー、何で俺に近づいた?」
 「話し相手...欲しかったから...でも今は」
 「今は?…言い訳聞いてるほど暇じゃねーんだよ...俺に近づくな。さもねーと、消すぜ」






去ろうとするグリムジョーに、は駆け寄って抱きついた。










 「お願い...信じて...。十刃に戻る気なんてない...」
 「離れろ、女」
 「…助けてくれて、ありがとう。すっごく嬉しかった。
  それとね、私好きだよ。グリムジョーのこと...」










寂しそうなの表情
はパッと彼を放した。
そして、どこに行くでもなく、荒らされたお花畑をなおす。









グリムジョーは、お花畑の方を見るとの前まで歩いた。
そして、腕を引っ張り起し上げると、そのまま抱きしめた。












 「グリムジョー?」
 「いちいちめんどくせーんだよ...女ってのは」
 「えっ…?」
 「…愛してる」











はグリムジョーの背中に手を回すと、ギュッっと抱きしめ返す。
















 「どうして隠してた」
 「隠してるつもりはなかったんだよ。でも、中々言い出せなくて...」
 「どうでもいい…」
 「?」
 「テメーが何でも、どうでもいい話だろうが」
 「ありがとう」

















礼をいわねーといけないのは俺だ。
がいなけりゃ、愛なんて知りもしなかった










 「...礼を言うぜ」















彼のぎこちなさ
それも彼だからいいのかもしれない。









 

 

 

あとがき
 
はい、駄文...(反省

途中から短編じゃ終わんない!!

と思いまして無理矢理終わらせました(オイ

グリムジョーは不器用そうだなと勝手に思い込んでます

そんなところも、また良いんですけどねvV


ここまで読んで頂きありがとうございました!

 

最終更新日 2008/03/12