私は空座第三高校に転校することになった。

新しい環境で今日から過ごす

そう思うと少し不安があった。

今までに転校は一回だけしたことがあった。

親の仕事場の転勤によるものだった。












 「失礼します」






そう、転校生は決まって最初は職員室にいかなければならない。

何でかは知らないけど…

それに、「さー、教室に行け」何て言われても場所を知らないんだから困るだけなんだけどね









 「、こっちだ」







奥で手を振っているのは担任の浮竹。

見た目的に優しそうでよかった。

そう心から思った。











 「おはようございます」


 「おはよう。今日もいい天気だな」


 「そうですね」









絶対この人いい人だ!!



この時は目の前のニコヤカに笑っている担任の浮竹を見て、良い人に認定した。

その認定は自身のものだけに、どのように選別されるかは不明なのだが...




前に一回転校した時にこの、チャイムが鳴り教室に行くまでの間

職員室にいる時間が一番嫌だったのを覚えていた。

というのも、話しをすることがないからだ。

微妙にきまづい空気、ソレが嫌だった。

だが、今回は違った。

担任の先生が色々と話しをしてくれたから。

少し緊張していたが、それも少しだけ和らいだ。










 「それじゃ、教室に行こうか」


 「はい」


 「先生どんな子が来るか少し楽しみにしてたんだ」


 「そうなんですか?」


 「聞いてた通り、良い子でよかったよ」


 「良い子なんですかね?」


 「先生が言ってるんだ。間違いないさ」








そんなニコヤカな笑顔で言われても私困るんですけど…

そんなに良い子じゃないのでι












 「ここが、2-A組の教室だ」






はこれから自分が通う教室の扉をみる。

といっても、他の学校の扉と大差はない。

ただ初めてのこの扉には少し威圧感があった。

教室の中から漏れてくる元気溢れる声。

そんな中に一人の教師が入り「席に着けー」というと大人しくなるんだから

この教師ただものじゃない、そう思った。










 「今日は転校生が来たぞ!」






そういうと、当たり前だが教室はざわめく。

好き勝手に想像した人物を描き期待する。

その期待を裏切るのがこの私の役目なのだろう。

そう考えると私もある意味悪者なのかもしれない。







 「入って来い」




そう呼ばれた私は静かに教室の扉を開け一歩、また一歩と中へ入る。

教卓の横にくると、前を向いて自己紹介をする。








 「初めまして。 です」





今だ教室はざわめく。










下手な期待なんてするから落ち込むんだよ。

私は何も悪くないからね!

勝手な想像してた方が悪いよ!!

先生もそう思うよね?



なんて心の中で思っていた。

だって、教室が少し静まったから…

コレはがっかりしてる証拠じゃないのさ!











 「皆よろしくな!の席は窓側の前から三番目だ」


 「はい」








私は言われた席へと着く。

その間もこのクラス全員の視線を私は一人で背負っているのだろう。

正直そんなに見られてたらここにいずらい。

穴があるならそこに入りたいくらいに。







 「よろしくね!」





そう話しかけてくれたのは隣の席の女の子だった。




 「よろしく」


 「俺、阿近な。よろしく」



前の席の男の子がわざわざ自己紹介をしてくれた。








 「よろしくね、阿近君」










何かしらないけど、周りから「ずるい」だとか「いいな〜」という男の声が聞こえたけど…

一体何がずるいの?
















そして、先生がいなくなると転校生には質問攻め、というイベントが待っている。

誰も望まないそんなイベント…

だけど、転校生の宿命とも言えることなんだろうな〜、と思った。














 「ねーねー、ちゃんって第二真央霊術学院から来たんでしょ!?」


 「うん」


 「あそこ凄く頭いいよね」


 「そ、そうかな?(言われると思った。でもね、私頭よくありませんから!!)」


 「なー、お前彼氏とかいんの?」


 「阿近さん、直球で聞いてきましたな」







男子はそこで盛り上がっていた。









 「私?」


 「あんた以外にいねーだろ」


 「いないよ」


 「まじかよ!?」


 「(「まじかよ!?」ってそんなに驚くことでもないじゃん?)」


 「彼氏作らないの?」


 「作らないっていうか作れないのかな」






はそんな質問をした女子に苦笑いで答えた。

あちこちで「うそ!?」だとかなんだとか言っていた。

は、嘘つくわけないじゃん。などと思いながら軽く流した。













 「ちゃんモテたでしょ?」


 「そんなわけないよ」


 「またまた」


 「ほんとにモテなかったよ」







な、なんなんだ!?

この女子たちは!?

どうしてそんなことを聞くんだろ…

というか寂しくなるからやめてよ。











 「ちゃんかわいいのにね」


 「私が!?地球がひっくり返ってもないから!!」









前の学校にはこんなこと言う子いなかったな〜

ってか、私かわいいとかホントありえない!

もう、何か転校初日から大変なことになってないかな…?










質問攻めも授業開始の鐘が鳴ると一時終止がつく。

そして、皆席につき、今度は座席に近い人同士がおしゃべりを始める。












 「なー、」


 「何?」






確か…阿近君だったよね!








 「お前ココ(3−A組)の副担知ってるか?」


 「副担?」


 「グリムジョー・ジャガージャックって言う奴だ」


 「知らない」


 「そうだよな。ここのクラスは特別に副担設けられてるからな」


 「特別?」


 「俺らの担任病気で身体弱いんだ」


 「浮竹先生が!?」


 「だからその代わりがジャガージャックってわけだ」


 「へぇ〜。どんな人?」


 「社会科担当だ」


 「じゃー、この時間に会えるね」


 「喜ぶもんじゃねーぞ」


 「どうして?」







そう聞くと少しだけ、阿近の顔に陰がかかった。












 「怖いぜ」


 「…怖い?どう怖いの?」


 「睨まれたら終わりだな」


 「…でも、何もしなきゃ大丈夫だよね?」


 「どうかな」








どうしてあなたは私を脅すのですかぁ!?

転校初日しかも、一時間目から私を死においやるつもりで?












その時ガラッ、と扉が開く音

それと共に入ってくるのは、先程の話の主人公、グリムジョー・ジャガージャック








 「起立・礼・着席」







当たりはシーンと静まり返っている。




私は先程阿近君が言っていた意味がわかった気がした…

なんていうか…怖い。

その言葉が相応しいのだろう。

阿近君がそこまで言っていたこと、本当だ。

怖い...怖いよ母さん!!

と思っていると、目がバッチリ合った。

殺される!!

目が合った瞬間そう私の頭では危険信号を出していた。












 「」


 「はい!!」







コワッ!!

何で行き成り私の名前を呼ぶんだよ!












 「昼休み職員室に来い。渡すものがある」


 「はい…(あっ、私死ぬんだ)」




本能的にそうとしか思えなかった。














 「」


 「?」



阿近がの方を軽く向くと、





 「GOOD LUCK」





と言い残し前を向く。





なっ…なんですかぁ!?

それって、まさに私の身が危険だと言ってるも同然じゃないですか?

私絶対転校先間違えた。

担任の浮竹先生はあんなに優しいのに...












は昼休みのことを心配しながら授業を受けていたが、あることに気がついた。



「(わかりやすい)」


そう授業がわかりやすいということ。

これで優しかったら文句ないのに、と思う。










授業終わり、女子が「ちゃんがんばってね」と言ってきた。

それはもちろん昼休みのこと...

そりゃ頑張る以外にやることもない。

なんせ、あの迫力で見られたのだから…。
















 

最終更新日 2008/03/05