え〜っと…
彼の霊圧辿るとココに辿りつくんだけどな〜…
…。
結構立派な家に住んでいらっしゃるのねι
実はお金持ちだったんだ…。







鈴は取り敢えずドアを叩く。
しかし、物音一つしない。








いないのかな?
でも、ちゃんと気配はするんだけど...
居留守使われてる!?
昨日の所為で嫌われたかな?
いや、でも折角抜け出して来たんだからこのまま下がるわけにはいかないよ!!






鈴は何を思ったのか、窓の方に行き中の様子を伺う。








ゴンゴン
 ゴンゴン
  ゴンゴン...






ずっと窓を叩いていると一人の人が窓の傍に来た。
その人は勢いよく窓を開いた。
そのせいで、鈴は鼻を窓に掠る







 「いたい!」
 「…!?お前、こんなとこで何してんだよ!?」
 「いや...果物を持ってきた...」






鈴は手に持っている紙袋二つ分にギッシリと詰められたものを見せる








 「…上がるか?」
 「おじゃましま〜す」





と窓から上がろうとしたが、窓は閉められ、指で玄関を指された。






ですよね〜
窓から入るお客なんて泥棒くらいだもんね...







鈴は玄関へと行きドアが開くのを待つ。
ガバリと扉が開くと鈴は間一髪でそのドアが顔面に当たるのを避ける。







 「あんた...危ないんですけど...」
 「上がるのか?上がらねーのかハッキリしろよ」
 「上がらせてもらいます」








鈴は玄関に入り、草鞋を脱ぐ。
そして、「はい」と紙袋を渡す。








 「…この果物どうした」
 「お見舞い品に上司から貰ったんだけどさ、それが莫大な量だったからおすそ分け」
 「見舞い?」
 
 「そう、昨日アレからぶっ倒れたんだよね、私(苦笑)
  なんか、あの虚達毒持ってたらしくてさ、まんまとやられたわ」
 「…寝てなくていいのかよ」
 「いいの、いいの!どうせ暇で抜け出して来たんだからさ。にしても一護って立派な家に住んでるんだ」
 「立派ね...」
 「? それより、街の案内してよ!!昨日約束したじゃん」
 「俺と一緒にいるとろくなことねーよ、あんた」
 「どうして?」
 「…昨日言ったの覚えてねーのかよ」
 「あんたが気持ち悪がられてる話?」
 「…」
 「だから、私は一護のこと気持ち悪いなんて思ってないって」
 「何でだよ!?普通と違う奴は変なんだろ!?」
 「ソレ、思い込みじゃない?それに良いじゃん!私と一護が嫌じゃなきゃ...
  あっ、そっか。私半強制的に一護に頼んだんだもんね。私が嫌だったら断ってくれていいよ」
 「...嫌じゃねーよ」
 「それじゃー、決定!!街の案内よろしく〜♪」













鈴は一護の手を取り、ソファーに腰を掛けている一護を起き上がらせる。









 「早く!!早くしないと私、副隊長に気付かれて雷落とされるんだから!!!」





無邪気な鈴の笑顔
その顔に誘われて、一護の足は動き出す。
街に出た二人はまるで恋人同士のようだった。
愛想の良い彼女とそうでない彼氏と言ったところだろう。










 「どっかお勧めの場所ってない?」
 
 「…あまり街に出ねーんだよ」
 「じゃー、二人で色々見て新しい発見しようよ!!あとね、ちょっと行きたいとこあるんだけど...」
 「どこだよ」
 「うんとね、『竜宮』っていう甘味屋なんだけど、流魂街に来ると絶対そこに寄るんだ!」
 「…あそこか」
 「知ってるの?」
 「まーな」
 「美味しいよね!!白玉善哉」
 「食べたことはねーよ」
 「そうなんだ。じゃー、食べに行こう!!」







二人は竜宮という甘味屋に入って行った。




 「いらっしゃい」


中に入ると、おかみさんがそう言ってくれた。




 「あら、鈴ちゃんじゃないかい!」
 「おばさん、こんにちは!!」
 「今日は副隊長と一緒じゃないんだね」
 「恋次さんは仕事ですからね。あっ、私が抜け出したのは秘密ですよ!!」
 「わかってるよ。アレ?そちらの…」







おばさんは一護を見て言葉が途切れた。






 「鈴ちゃん...悪いことは言わない。アイツと一緒にいたらダメだよ」
 「大丈夫ですよ。一護は優しいんです。それに私の命の恩人ですし」





二人は一護に聞こえない声で話した。
しかし、一護は気付いていた。
そのおばさんが自分のことを良く思っていないことを...








 「おばさん、いつもの頂戴! 一護は何がいい?白玉善哉?」
 「…」
 「白玉善哉二つね!!」
 「はいよ」










一護はとてもこの場が嫌だった。
鈴、以外の人が皆自分のことを睨み付けているからだ。
居心地が悪いとはこういうことを言うのだろう。












 「一護、立ってないで座ろうよ」







鈴は一護を二人用のテーブルまで連れて行き、そこに座る。








 「一護ってさあの広い家に一人で住んでるの?」
 「あぁ」
 「掃除大変じゃない?」
 「家政婦が全部やってくれんだよ」
 「さいですか…(どんだけ金持ちなんですかー!?)」
 「お前の家はどうなんだよ」
 「私の家はね...(一護の家と比較すると物凄く虚しくなるんですけど...)
  普通のどこにでもあるような家」
 「・・・」
 「いや...ほら、一護の家と比べると可哀想って思われるような大きさだよ?
  一人暮らしだし、お金無いし」
 「おまちどうさま、白玉善哉だよ」
 「わぁ!相変わらず美味しそうvVありがとう」
 「鈴ちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるからね。うれしいよ」
 「さー、食べよう!…どうかした、一護?」
 「…甘いの苦手だ」
 「そうなの!?なら先に言ってくれればよかったのに」
 「…」
 「一口食べてみなよ!美味しいよ!!」
 「…」










一護は言われた通り一口食べてみた。









 「どう?美味しい?」
 「…ウメーとは思うぜ」
 「あっ、やっぱり甘い?」
 「あぁ」
 「じゃーさ、それ私食べていい?」
 「俺、口付けたんだぜ?」
 「勿体無いじゃん!それに、一回スプーンで掬っただけでしょ?大丈夫だよ」











鈴はニコリと笑うと、一護は何も言わず、鈴の方へお椀を押す。








 「ありがとう。こんな美味しい物が苦手なんて可哀想だよ」








とっても美味しそうにソレにガッツク鈴
それを黙って一護は見ていた。
鈴が「ご馳走様」といい残されたのは、中身がからになり綺麗に食べつくされたお椀だった。












 「さーて、街の見学の続きしよう!時間なくなっちゃうし」
 「…」




会計で鈴は二人分のお金を払う。






 「俺が出す」
 「いいよ。一護は食べてないでしょ?」
 「いい、出すっていってんだよ」
 「ご心配なく!それくらいのお金はあるから。今度奢ってよ!!一護が食べれる店で」
 「…」





また俺は鈴の笑顔に負けた。


会計が終わり鈴は先に店を出る。
その時一護は、店のおばちゃんに
「あんた、鈴に手だすんじゃないよ。そんなことしたらタダじゃ済まないからね...」
と言われた。周りの客も一護のことを冷めた目で見ていた。


何かをしたわけでもねーのに、どうして俺はこんな思いしねーといけねーんだ!!


怒りを抑え一護も店を後にする。
鈴は一護の横に来て、街を見て歩く。
一緒に見ていた一護は、その風景や鈴の言葉すら頭に残っていなかった。
一人物思いに耽りながら進んでいく。
人通りの少ない川葉にかかっている橋の上で一護は歩くのをやめた。










 「どうかした?」




その異変に気付いた鈴も歩くのを止め、一護の方を振り向く。





 「…」
 「…もしかして、気にしてる?」
 「何のことだよ」
 「周りの人のこと。甘味屋からずっと変だからさ...一護が」
 「あんた、嫌じゃねーのかよ。俺と一緒にいるだけで変なこと言われんだ。
  冷たい視線で見られて、コソコソ悪口言われて、嫌じゃねーのかよ」
 「気にしない。私は全然気にしない。あんたのことわかってない奴になんか勝手に言わせとけば良いじゃん。
  さっきも言ったじゃん。私と一護が良ければいいんじゃないの?って」
 「あんたは良くても、俺は耐えれねーんだよ!!いっつもそうだ。街に出るといつも皆に見られんだ」
 「じゃー、一人で耐えなきゃいいじゃん。今は私がいるんだからさ。って、そういう問題じゃないか...」
 「…何で、あんたは俺に優しくするんだよ…」
 「別に優しくしてるわけじゃないよ。一緒に居て楽しいから居るだけ」
 「…そんなこと信じられるかよ」
 「凄く思うんだけど、あんた何でそんなに人間不信なわけ?」







 

 

2008/03/06