ゆっくり放す

　「悪い……」

　「…帰ろうか？」

は修兵のしたことには触れずにそう言った。

家に帰り、夕食の支度をし、食べてる時も殆ど会話がなかった。

夕食を食べ終え二人はいつものようにソファーでＴＶを見ていた。

いつもと違うところと言えば、しゃべっていないことくらいだろう。

　「…」

　「何？」

　「悪かった」

　「何が!?」

　「…キスしたこと」

　「あぁ…いいよもう」

は修兵に笑顔で言った。

　「嫌だったろ？」

　「修兵が思ってるほど嫌ではないと思うよ？」

　「...ってことはちょっとは嫌だったってことだろ？」

　「う〜ん…驚いたカナ」

　「そっか、ゴメンな」

　「だから謝んないでよ!」

　「わかったよ」

いつものようにまた話始めた。

　「絶対この人が犯人だって!」

　
　「いや、こっちだな」

　「うんやこの人」

　「ぜってー、こっちだって」

犯人当ての結果はが勝利した。

　「へへ〜ん!思い知ったか!!」

　
　「はいはい思い知らされました。つーかお前ソファーの上で騒ぐなよ。コケるぞ？」

　「そんなドジなことしませーん!」

と言っている傍からは足を滑らせた。

修兵は慌ててを引っ張る。

　「いわんこっちゃねーな」

　「ありがとうございます…」

さっきキスされたせいか、修兵に軽く抱かれている状態に気付き心臓がドキドキした。

修兵の顔がまた近くにある。

の瞳に修兵の唇が映った。

優しい言葉が出てくる修兵の口…

引き寄せられるかのようには軽く軽く唇を付けた。

短い口付け...

それが終わると二人は互いの目が合う。

修兵の顔は少し驚いていた。

　「ごめんなさい…私……何してるんだろ…」

修兵は少し目線を外したに、少しづつ顔を近づける。

は反射的に目を瞑った。

軽くの唇に触れると放す。

そして、角度を変えてまた付ける。

また角度を変えすると、また角度をかえる...

今度角度を変えたときは先程より長くキスをした。

の様子を見るように唇を離すと、目を瞑っていたの目は薄っすら開き段々と開いてくる。

　「…」

　「……」

　「嫌だったよな…」

　「…そんなことないよ。修兵キス上手いんだね。私初めてだから…」

　「悪い、ファースト取っちまったな」

　「いいよ、別に」

　「〜只今！」

　「「!?」」

　「なっ…何してんねん!!!!!」

　「いや、これはね、私が倒れそうになったとこを修兵が支えてくれたとこなの!!」

　「…ホンマ？」

　「「ホンマ!!!!!」」

どうやらギンはと修兵がキスをしているところを見ていなかったらしい。

そうわかると胸を撫でる二人。

　「あれ？ギンさん今日も帰れないんじゃなかったんですか？」

　「仕事終わったんや」

　「へぇ〜、父さんにしては早いね」

　「が寂しゅうないかな〜思うてはよ帰ってきたんやｖＶ寂しかったやろ？」

　「いいえ。いなかったお陰でとても快適なＬｉｆｅを送れました。今後とも是非仕事でいないで下さい」

　「そないなこと言わんといて!!せっかく久々に会えたんやから一緒にお風呂入ろうか？」

　「一人ではいれー!」

にくっついてきたギンを吹っ飛ばした。

　「一日経っても変わらん威力やな…流石ボクのや」

　「誰がお前のだ!!誰が!!」

　「やんｖＶおいで、父さんがギュッって抱きしめたるで!!」

　「結構です間に合ってます」

　「せやったら、ベッド行く？一緒に寝ようなｖ久しぶりに」

　「却下!!久しぶりもくそもなーい!!早く永眠して下さい」

　「酷いな〜。二人きりがいやなん？せやったら妥協してスリー…」

ギンは一日ぶりに溝打ちを喰らった。

　「そんなに死にたいですか？」

　「…ホンマに…死にそうや…」

　「、それくらいにしとけ…じゃねーと本当にギンさんやべーぞ」

　「修兵君は優しいな〜、優しくされても連いてったらアカンで!!」

　「はいはい」

　「〜、マッサージしてや。疲れたわ」

　「仕方ない。家の財源はあんたでまかなってるしね」

　「ホンマ!!ボクの終わったらにマッサージしたるな!!どっから揉んで欲しいん？胸やろ？大きくなりたいんやろ!!
　　エエよ〜、たっぷりマッサージした…グフッ」

　「バッドナイト…」

はバイバイと手を振って自室に行った。

暫くして修兵がノックして入ってきた。

　「ギンさん寝たぜ」

　「そう」

　「冷たいな。相変わらず」

　「帰ってくるなり、娘にセクハラってどうよ？」

修兵は苦笑した。

　「今日も一緒に寝ようっていう了見？」

　
　「いや、別に」

　「そっ」

　「…には恋次がいるもんな」

　「何行き成り!?」

　「いや...」

　「修兵熱でもあんの？何か変」

　「ねーよ。んじゃ、一緒に寝るか？」

　「やっぱそうじゃん!」

　「細かいこと気にしてると身長伸びねーぞ」

　「どうせもう止まりましたよ!」

　「そうムキになるなって」

　「なってな〜い!まー、いいや寝ようか？」

　「そうだな」

結局二人は今日も寝ることになったわけだが...

　「腕枕してやろうか？」

　「いいよ!!」

修兵がなんか…優しい？というのだろうか？

　「結構気持ちいいもんだぞ？」

　「そうなの？」

　「知らねーけど」

　「知らないんじゃん!!」

　「してもらったことねーしな。したこともねーし」

　「だったら言うな！」

　「特別にしてやろうと思ったんだけどな」

　「思わなくていいですよ？」

　「んじゃ」

　「却下!!」

　「まだ何も言ってねーぞ」

　「いや、つい癖で」

　「癖ってな…。まーいいや…」

修兵は仰向けに大の字で寝転んだ。

　「私の寝るスペースがありません」

　「ちゃんとあるって」

修兵は大の字をやめ普通に寝る。

は空いたスペースにねっころがる。

　「なんか…いつもと違う感じする」

　「俺も」

二人は顔を見合わせて苦笑した。

　「多分キスしたからだよな」

　「そうかも…」

　「後悔はしてねーけど」

　「修兵はプロだしね」

　「プロじゃねーよ」

　「プロだね!間違いない私が言ってるんだ!!」

　「根拠ねーな」

　「それは仕方ないよ。ファーストキスだったんだから。ちょっと返してよね」

　「無理だろ」

　「まっそうだけどさ...」

　「返せないこともねーかもな？」

　「どうやって？」

　「ファーストキスされた男がまたすりゃ戻るんじゃねーの？」

　「絶対もどらないから!」

　「もうしねーから…だから、安心して寝ろよ」

　「…別に……最初から安心してるよ」

は修兵の方を向いた

　「おやすみ」

チュッっと音を立て修兵の頬にキスを落とした。

は恥ずかしさ故に後ろを向く

　「おまっ!?…どうせなら口にして欲しかったけどな」

　「うっさい!」

　「おやすみ…」

は修兵に抱きかかえられいつもよりも体温が身近に感じた。

この日はあまりよく眠れなかった。

翌日、目が覚めた二人は笑って「おはよう」と挨拶を交わした。

　「さーてと、ご飯食べますか？」

　「だな」

二人はそれぞれの部屋で用意をするとリビングに出る。

そこには父の姿はない。

まだ寝ているのだろう。

　「起さなくていいのか？」

　「いいのんじゃない？仕事あるなら起きてくるだろうし」

　「そうか」

自分達も暇ではないので、さっさとご飯を食べ学校に行く。

学校に行くといつも早いはずの恋次がいなかった。

　「あれ？恋次今日遅いね」

　「そうだな。寝坊でもしたんじゃねーのか？」

　「成るほど!じゃー、バカにしてやろっと♪」

と思っていると、恋次が姿を現した。

　「おはよう!」

　「おぅ」

　「はよ」

　「はよ…」

　「今日は遅いんだね」

　「あぁ、ちょっとな色々あって」

　「恋次の色々って大抵は妹と弟のことだよね」

　「まーな。お前の悩みが親父さんってのと同じだろ？」

　「そうだけどさ。何かあったの？」

　「幼稚園に送って来たんだよ。御袋寝坊してな」

　「アハハハ...朝から大変ですこと」

　「お前今日は色々なかったのか？」

　「色々なかったよ。父さん寝てたからね。色々出来なかったんだよ奴は!」

　「成る程な」

　「ギンさん昨日遅かったしその前は泊りがけで仕事してたから疲れたんじゃねーのか？」

　「そうかもね」

いつものように担任の先生が入ってきてＨＲが始まる。

それが終わると授業…

いつもその繰り返し。

そんな放課後と修兵は恋次の家に遊びに行くことにした。