そこに現れたのは先程を探していた修兵だった。





 「そいつから手、放してもらおうか?」
 「…ちっ」





は何も言わず、舌打ちをしてどこかに消えた。




 「大丈夫か?」
 「バッチグー!」
 「何がバッチグーだ。たくっ、昨日気をつけろって言ったばっかじゃねーか
  しかも、【必殺狐殺しお見舞いしてやる】とか言ってなかったか?」
 「そりゃ…その……まー無事だったんだし良いじゃん!!ありがとう修兵」
 「今後気をつけろよ」
 「アイアイサー!!」
 「恋次も心配してたぜ」
 「何で?」
 「お前がどっか行ったまま帰って来ねーから」
 「そっか…明日謝っとくか。おし、帰ろうぞ!!」
 「お前はいつの時代の人間だ?」
 「気にしなさんなって」








帰った二人はいつもの様に夜を過ごしていた。











 「父さん今日も遅いんだね」
 「そうだな。最近忙しいみたいだな。居なくて寂しいのか?」
 「まっさか!五月蝿いのいないから悠々と出来るよ」







そんな強がり言ってるけど、本人は寂しいんだろうなと修兵は思っていた。






 「ただいま〜…」




いつもとは違うテンションのギンが帰ってきた。
いつもならただいまといいつつ、に飛びつくのだ。




 「どうしたの!?」



その異変に真っ先に気付いたのはだった。
そりゃ、こうも態度が違えば誰だって気付く。





 「、酒や!酒!!」
 「…わかった」




は冷蔵庫にビールを取りに行った。





 「どうしたんですか!?」
 「仕事でちょっとあってな…」
 「はい、ビール」



はコップに注いであげる。




 「〜癒してや〜」




ギンは力なくの背中に頬をくっつけスリスリした。
も「やめてよ」とは言ったが、あからさまに拒まなかった。








 「今回CM作ってんやけど、女優が我が侭でな〜…しかもや、僕に迫りよるねん」
 「でっ?迫られてまさか…してないよね?」
 「せーへんよ!!ボクにはしかおらへんもん!!」
 「それ変だから。何か思い違いしてらっしゃりません?」
 「せやって、ボクのやん?ボクが他の女に手だしたら不倫になってまう」
 「成りません。決してそのような関係にはなりません」
 「偶にはボクと不倫ごっこしてや〜」
 「偶にはって、一度もしたことないでしょ!勝手に変なこと捏造しない!!」





修兵は不倫ごっこってなんだよ
と思いながらこの親子を見ていた。




 「〜……」
 「あれ?寝たよこの人…」



は寝てもなおかつ自分に寄りかかっているギンの頭を指で反対側に突く。
すると、面白いようにギンはそちらの方に倒れた。
ソファーの上だけあって頭を強打しなかったことがラッキーだっただろう。









 「、これかけてやれよ」




修兵はどこからか毛布を一枚持ってきた。





 「気がきくね!」
 「風邪引いたら困んだろ?」
 「そうそう。こいつが風邪引いたら一日で私に移るからね…全く脅威の狐菌だわ」
 「…。そろそろ俺らも寝るか」
 「俺らも?って…また一緒に寝る気ですか?」
 「いいじゃねーか。お前一人で寝るの怖いんだろ?」
 「そりゃあんたでしょ!」
 「お化け出るかもしれねーぞ?」
 「出ません。というか、ホラー映画観なきゃ大丈夫だもん!」
 「まっ、今晩くらい付き合えよ」
 「あんたの場合今晩、じゃなくて毎晩じゃないの?」
 「細かいことは気にするな。おら、寝るぞ〜」






その時既に12時を回っていた。
明日も朝早くから学校がある二人は寝ることにした。









 「なんか…修兵と寝るのに慣れた自分が嫌だ…」
 「そう言うなって。まだ何もしてねーし」
 「そういうこと考えてたの!?」
 「んなわけねーだろ。只お前と一緒にいれて嬉しいだけだ…」
 「…うさんくさいな〜」
 「あぁ?今日助けてやったの誰だ?# あのまま放って置いても良かったんだぜ?」
 「ごめんなさい。とても感謝してます。修兵様はそんなはしたないこと考えるようなお方ではございませんでした」
 「よろしい。んじゃ、おやすみ」
 「おやすみ」







二人は眠りにつく…





暫く経つと修兵が口を開いた。




 「?」
 「…zZZ」
 「…寝てるよな」



修兵はの髪をそっと撫で微笑んだ。






 「お前と最初に寝た時に、俺御袋も親父もいねーって言ったよな?
  御袋の顔は写真で知ってんだけど、親父の顔って全然見たことねーんだよな。
  俺を育ててくれた人さ、御袋の御袋らしいんだが、勘当しちまってから会うことも話すこともねーって言ってたな。
  どっかで元気に暮らしてたらいいなって、俺思うんだ。確かに俺のこと捨てたかもしれねーけど
  そこまで憎めないんだよな…大人の事情?って奴……
  だから俺が大人になって結婚して子供できたら、その子供には絶対俺のような思いさせたくねーんだ…
  出来ればじいちゃんとばあちゃんにも合わせてやりてーし…
  出来れば……その子供はお前との子供がいい…。恋次の家族みてーに毎日ワイワイやって
  楽しく過ごしてーんだ、お前と一緒に…ずっと、な」


 「…出来るよ…修兵なら…必ず出来る」





からそう返ってきた。
寝てると思っていたから全て打ち明けたこと…
今思うと少し恥ずかしい。





 
 「…私ね、母さんいないんだ。母さんは父さんを見捨てた...。だから私は母さんが嫌い…。
  離婚の時、母さんは私を育てるって言ったんだけど、私は父さんを選んだ。私父さん大好きだったから。
  今も好きだよ、父さんのこと…まー、ちょっとアレだけど。
  母さんは人としてどうかしてた。私が小さかった頃…そうアレは私が小学1年生の時…

 「ただいまー!!」

そこにはいつもは笑顔で「おかえり」って言ってくれる人がいなかった...。
私はどこにいるのか家中探し回った。


 「母さん?」

一つの部屋の前でなんかいつもと違うことに気付いて立ち止まった。
中からは母さんの声して、部屋の扉を開けた。

 「母さん…?」

その部屋は寝室で…
母さんは私がしらない男の人と一緒に寝てた。
私に気付いた母さんは私を呼んでこう告げた


 「いい?このことは誰にも内緒。もちろんお父さんにもよ。わかった?」
 「…」
 「へー、この子が自慢の娘?」
 「もう、駄目よ。顔バレちゃうでしょ?」
 「大丈夫だって。カワイイね、何歳?」
 「…」
 「駄目。この子頭は良いんだから、ギンにバレちゃうわ。、外で遊んでなさい。このことは内緒よ」




この日から母さんのことわかんなくなってた。
どうして知らない人が家でベッドに寝ているのか…
どうして私を邪魔者扱いするのか
ある日私が玄関で知らない男の人が帰るの待ってたら、先に父さん帰ってきて




 「?どないしたん、こないなとこに座って?」
 「母さんがお外で遊びなさいって言うの」
 「もう寒いし、お遊びもここくらいにしような」
 「うん!今日も一緒にお風呂入ろうね」
 「せやな、背中流しっこしよか?」
 「うん!!」


父さんディレクターなんて仕事してるから帰ってくる時間とか一定じゃないでしょ?
だから母さんきっと驚いたんだと思う。



 「ただいまー」

父さんがそういうと、中でドタバタした音が聞こえてきて、父さんは繋いでた私の手を解いて
そのままリビングから寝室へ急いで行った。私もその後追って行った。



 「…何してるん?」
 「ギン違うのよ。この人布団を見てくれてたの!!」
 「言い訳なんか聞きとうないわ…」
 「、そうよね?この人お布団見に来た人よね?」
 「…」
 「そうよね?」
 「外に追い出しといて、自分は遊んどったんか?」
 「違うわ!!」
 「何が違うんや?…おいで見たらアカン。見たらアカンよ?」
 「父さん?」




私は父さんに抱かれてリビングに連れて行かれた。
男の人が帰ったあと、リビングで喧嘩が始まった。




 「何やあの男...」
 「だから布団屋の人よ」
 「下手な嘘吐くなや。バレバレやで?数ヶ月前からやろ?」
 「違うわ。今日たまたま来た訪問販売の人よ」
 「言い訳も対外にしー」
 「ごめんなさい」
 「?どないしたん?」
 「私のせいで喧嘩してるんでしょ?」




父さんは私に優しく笑ってくれた。



 「ちゃうで。はなんも悪くあらへん。父さんと一緒に夕食食べに行こか?」
 「うん!母さんは?」
 「母さんはな…用事あんのや」
 「そうなの?」
 「ほな、行こうや」






この日はこれで終わった…
けど、次の日父さんは休暇を取った。



 「、よく聞いてちょうだい」
 「何?」



私は朝起きるとリビングのソファーに座らされてこう聞かれた。





 「は母さんと父さんどっちと一緒に住みたい?」
 「二人とも一緒に住みたいよ」
 「駄目なの。どっちかなのよ。もちろん母さんとよね?」
 「に言い寄るのは無しや。に好きな方選ばし」
 「…私……決められないよ」
 「いい。事情あってお父さんとは一緒に暮らせなくなっちゃったの。わかってくれるわよね?」
 「…わかんない」
 「ギン、は私が預かるわ。母親がいなくちゃ立派になんてなれない」
 「よう言うわ」
 「…あの男の人のせいなの?私が父さんに内緒にしてたから喧嘩してるの?
  私が悪いの?どうしたら仲直りしてくれるの?私が居たら仲直りできないの?」
 「は何にも悪くないのよ」
 「せや、は悪くあらへん...せやから元気だし?」
 「…じゃー、誰悪いの?……母さん悪いの?母さんがあの人連れてきたから?」
 「「…」」
 「私、父さんと暮らす」
 「!!」
 「…母さんなんて大嫌い!何で父さん悲しませるの?父さん悪いことした?してないよ。母さんが悪いんだよ」
 「…。ごめんね」
 「ほな、行こうか
私と父さんは家を出た。
元々父さんの家なのにね…父さん優しいから最後に母さんにプレゼントしたんだ
あんな奴なんかにプレゼントする必要ないのに…」











ギンはの部屋のドアによしかかって二人の会話を聞いていた。
 「ごめんな、修兵…辛かったやろ?……ごめんな…」
ギンはそう呟いた。中の二人には聞こえてはいないだろう。








 「父さん凄くいい人なのに...なんで浮気なんてしたんだろ…。あんなに良い親いないよ?
  だってね、どんなに忙しい時でも授業参観には必ず来てくれた。
  運動会とかも一緒に参加してくれた。私母さんいないから色々言われたけど、その時父さん助けてくれた
  どうしたらそんな人を裏切れるのかな?わかんないよ…」


 「そうだな…ギンさんほど子供思いな人もいねーよな。
 
  俺もギンさんみてーな親父、欲しかったな…」
 「もう、父さんは修兵の父さんだよ。修兵は家族だから」
 「家族か…」
 「うん」
 「お前ともか?」
 「えっ?」
 「いや…なんでもねー。おやすみ」











ギンは音を立てないようにソファーに戻った。


はボクのせいで傷ついてたんやな…
小さいときから強がりやったから、無理してたんやな
修兵…大きくなったんやな……
どれだけボクが探しとったか知っとる?

















 

 

2008/03/05