俺はいつものように甘納豆を買いに行く。
そして、いつものように、平台に釣りを置かれる。
決して手渡しで渡すことはない。
今になっては気に止めてはいない。










冬獅郎はばあちゃんが居る、自分の家へと帰る。









特に何をしたわけじゃない
 けど

俺を怖がっていることだけは知ってる

ここではみんなそうだからだ

西流魂街第一地区「潤林安」

ここで俺のことを怖がらないのは雛森とばあちゃんの二人だけ






銀色の髪を指してか
碧緑の眼を指してか
それとも冷めた性分を指してか



みんな俺を「氷のようだ」と言う


































一日おいて甘納豆を買いに行った。












 「これ...下さい」
 「はい。三環のお釣りになります!」













店員が俺に直接お釣りを渡す。
店員はニッコリ笑って「ありがとうございました」と言う。
俺は少し固まっていた。
が、何もなかったように「どうも」と言ってその場を去った。














そういや、初めて見る顔だった
初めてだったから直接釣りを渡した
そう考えるのが一番自然だ
深い意味なんて何もない
新しくここに来た奴で俺のことを知らなかった、ただそれだけ
次にあったらきっと俺を怖がる
皆そうだ




俺に友達は
        いない



























 「いらっしゃい」












何回か通っていると顔を覚えられたらしい















 「甘納豆だよね!」
 「あぁ…」
 「はい」
 「どうも」
 「甘納豆好きなんだ」
 「…」
 「あっ、別に深い意味はないからね!今度、新作出るからまた買いに来て下さいね!!」


















その店員は俺の傍に来ると小さな包みを渡した。















 「はい、金平糖。いっつも来てくれるからおまけ。他の人には秘密だよ」














そう言うと、俺の手に持たせると何も無かったかのように店番をしていた
俺も何もなかったように外に出る
先程もらった包みを見ると、彼女が言っていた通り小さな金平糖が入っていた。
数粒つまみ、口に運ぶ。
口の中では金平糖の甘みが広がった。




 「あま...」


























そんな変わった店員と知り合いになってから数日が経った。
この日も俺はいつものように甘納豆を買いに行った。



















 「いらっしゃい」













そう言うと彼女はいつも俺を見て笑う。














 「甘納豆でいい?」
 「あぁ」
 「はい、どうぞ」











そんなやり取りをして、いつものように店を出ようとした俺にそいつは話しかけてきた。

















 「ねぇ、ちょっと待って」
 「?」
 「今から休憩なんだけど、良かったら一緒に休まない?」


















断る理由もなかったため、俺は頷いた。
見せの奥にいる人に「休憩はいりまーす」
というと、外で待っている俺のところまで小走りで来た。





















 「お待たせ。名前、何て言うの? 私は、 
 「日番谷 冬獅郎だ」
 「冬獅郎君って言うんだ!いい名前だね」
 「…」















よくわからない女だな
そう俺は直感に思った




















 「冬獅郎君はお昼食べた?」
 「まだ食ってねーけど」
 「じゃーさ、一緒に食べよ? 朝お弁当作って来たんだ」
 「…」













近くの川辺へと行くとそこに二人は腰を降ろした。
は手に持っていた袋から一つの包みと水筒を取り出す。
開けられたお弁当からは色とりどりのおかずが並べられていた。















 「どうぞ」
















彼女はそう言って冬獅郎にお弁当を差し出す。














 
 「箸一つしかないから...」







そう言うと、割り箸を二つに割りだした。










 「これで、二人で食べれるよ」







ニッコリ笑って言う彼女だが、どうしてこんなことまでして
知らない奴を持て成すのだろうか?

という疑問にかられていた。
ましてや、怖いといわれている俺に
どうしてここまでするのだろうか?
ただの客なのにな...


















 「私ね、お友達いないんだ」









彼女はそう話してきた。











 「だからね、お友達になって欲しいんだけど」
 「…俺が?」
 「うん」
 「…別にいいけどよ…」
 「じゃー、決まりだね!!」
















は右手を出した。
それは、握手の意味。
少し戸惑いながらも冬獅郎も右手を出す。
数回縦に振ると手は解け、再び箸を持つ。






















 「やっと、友達できたよ」











嬉しそうに言う彼女。











 「…俺もはじめてだ」
 「そうなの?」
 「皆俺のこと怖がってる」
 「皆じゃないよ」
 「?」
 「私は怖くないから」















騙しているのではないだろうか?
              と疑った。



が、彼女の目がそうは語っていなかった。




















 「これからも宜しくね!冬獅郎君」
 「…冬獅郎でいい」
 「うん、冬獅郎! ほらほら、食べてよ!!全然お箸進んでないよ?...美味しくなかったかな?」











冬獅郎は卵焼きを食べて首を横に振った。
そんな姿を見たはクスクス笑った。



















 「冬獅郎は、ここに来て長いの?」
 「それなりにな」
 「そっか。じゃー、私の知らないこと沢山知ってるんだ!」
 「は最近来たのか?」
 「そうみたい。気付いたらココにいたから」
 「わかんねーことあったら、俺に聞けよ。教えてやるぜ」
 「ありがとう!! 知ってる人一人もいないから不安だったんだ。冬獅郎は家族いる?」
 「あぁ、ばあちゃんと桃がな」
 「そうなんだ。いいなぁ、家族か〜」
 「はいねーのか?」
 「私は一人だよ。小さい家借りて、そこに住んでる。そうだ! 良かったら遊びに来てね。
  多少なりとは御持て成しできるからさ」
























と居る時間は楽しかった。
友達…か…
悪くねーな。



























 「ごめんね、もう休憩時間終わっちゃうから戻らないと」
 「あぁ」
 「今度また一緒に話ししようね!」


















は冬獅郎に手を振ると、冬獅郎はそれに答える。
は懐から何やら取り出すと、冬獅郎に投げた。
反射的に受け止め何かと見ても、外見からは想像できなかった。


















 「?」
 「今度の新作の甘納豆!! 特別にあげる」

















という声がした。















 「サンキュー」











というと、笑いながらが戻っていく姿が見えた。










帰ったら、ばあちゃんにもやろう。



































と友達になって数日が経った。

別に何かを買いに行くわけでもない
だが、俺はその店に行く
ただ友達に逢いに












 「あっ、冬獅郎!!ちょっと待ってね。もう少しで終わるから」










の横にいる店員には冷めた目で見られた。













 「悪いことは言わないから、あの子と仲良くするのは...」
 「冬獅郎のことですか?」
 「そうだよ」
 「いい人ですよ」



















嫌でも聞こえてくるその会話
気にはしない
他の奴に何をいわれようが、は何も変わらない
それを知っていたからなのかもしれない



















 「おまたせ」
 「別に待ってねーよ」













は笑う。
冬獅郎より少し先を歩くのはだった。

















 「どこ行くんだ?」
 「今日は、おいしい甘味屋!!」
 「お前そんなに甘味屋まわって歩いてんるのか?」
 「違う違う!お客さんに聞くんだ」
 「なるほどな」
 「冬獅郎はおすすめの料理店とかないの?」
 「俺はばあちゃんの手料理が好きだ」











はクスクスと笑った。












 「なっ、なんだよ!?」
 「いや、いいなって」
 「?」
 「おばあちゃんきっと嬉しいよ。冬獅郎にそう言われて。羨ましい」
 「…意味わかんねーよ」
 「だって、私の料理はまだまだってことでしょ?」
 「それは」
 「いいよ、無理しなくて」
 「の料理もうめーよ」
 「ありがとう。でも、今度は私の料理が絶品って言わせるんだから!!」














と、少し腕を撒くって強く言う。

















 「楽しみにしてる」
























しばらく歩いていると、が一件のお店で立ち止まった。
















 「ここ」
 「…ここ?」












冬獅郎が疑問に思うのも無理はなかった。
外に『甘味屋』という看板があるわけでもない。
普通の家といったところだ。
何のかわりばえない。

















 「ほら、入ろうよ」
 「って、お前ここ普通の家じゃねーか」
 「外見で判断してはいけませんよ、冬獅郎。人間も家だってそうそうわかんないよ」














は「すいませーん」

と言って入って言った。

大丈夫のか?
という疑いを持ちつつも、冬獅郎も後に続く


























 「はい、いらっしゃい」
 「オススメの甘味下さい」
 「…俺も同じやつ」
 「はいはい。ちょっと待っててね」









というと、ここの女将なのであろう、おばあさんは奥の部屋へと姿を消した。




















 「ほら、言ったでしょ?」
 「...にしても、こんなとこに店があったんだな」
 「冬獅郎でも知らないんだ」
 「何でもかんでも知ってるわけじゃねーよ」
 「冬獅郎は物知りだから私の知らないこと沢山知ってるでしょ
  だから、私も負けじと頑張ってるんだよ!」
 「ふーん」

















冬獅郎は、初めて闘争心を燃やされていることに気付いた。
















 「はい、お待ちどうさま」








御膳に出てきたのは、フルーツと杏仁豆腐の上に黒蜜と黄な粉がかかっているものだった。

















 「わぁ!!おいしそう!いただきます」
 「いただきます」
 「ゆっくりして行きなされ」








二人が食べ始めると、おばあさんは奥の部屋に戻って行った。















 「おいしい!!これは絶品だね!」
 「うめーな」
 「来てよかったでしょ?」
 「あぁ、サンキュー」










二人は夢中でソレを食べる。
食べ終わるのに時間はいらなかった。
むしろ、おかわりしたいくらいだった。



「ごちそうさま」
スプーンを置く
少し寂しそうな顔をしたのに冬獅郎は気付いた。
















 「どうした?」
 「えっ...うん。ちょっと、聞きたいことあって」
 「俺にか?」
 「うん」
 「なんだ?」
 「行くんだよね?」
 「行く?俺はどこにも行かねーよ」









は寂しそうに笑いながら首を横に振った。














 「死神になるんでしょ?」
 「!?」











まだ、ばあちゃんにしか言っていなかった
に言おうと思っては、言えなかった
まさか、から言い出すなんて思いもよらなかった

















 「ごめん、おばあさんに聞いたんだ」
 「そうか…」
 「頑張ってね」
 「あぁ」
 「たまには、甘納豆買いに来て」
 「あぁ」
 「それから」
 「?」
 「冬獅郎が死神になっても、私達は友達、だよ?」
 「…当たり前だ」

















は席を立つと、「ごちそうさまでした!おいしかったです」
と言って店を出る。
その後に続いて店を出た俺
は俺と目を合わせてくれなかった
いつも二人で行く川辺で今日も、横にならんで座る















 「…」
 「んっ?」
 「お前、泣いてんのか?」
 「泣いてないよ。ただちょっと寂しいなって」
 「…」
 「ほとんど毎日会ってたでしょ?だから少し寂しいかな」















冬獅郎はユックリとを自分の方に引き寄せる。





















 「冬獅郎…」
 「バカ、泣くんじゃねーよ。会えなくなるわけじゃねーだろ」
 「そうだね」
 「直ぐ会える」
 「…うん」
 「休みは絶対戻ってくるからな」
 「わかった」
 「
 「なに?」
 「…好きだぜ」
 「うん!ありがとう、嬉しい」
 「だから!泣くなって」
 「だって、嬉しいんだもん」
 「わかったから、泣くのは今日だけにしとけ」
 「そうだね」



















これ以上泣かれると、死神になるのをためらう
こいつとは傍にいたい
だが、傍にいるには...
俺が強くならねーといけねーんだ
もう少し我慢してくれ
そうしたら、きっと一緒にいてやれる























冬獅郎が真央霊術院入学の日、は見送りに来ていた。









 「頑張ってね」
 「あぁ」
 「それと、はい」
 「?」




冬獅郎は白い包みを渡された。








 「甘納豆!」
 「サンキュ」
 「あと、お守り!!…元気でね」
 「もな」













手を振って見送ると、門の中へ消えて行く冬獅郎。
は見えなくなってもしばらくその場で門を見ていた。
早く会える日を心待ちにしながら...




















あとがき
 
甘納豆、私も好きです(笑

学院入る前の物語も大好きでございまして、

センターカラーで若かりしひっつんが載っていたジャ〇プを見たら

買うしかありませんでした!!(´m`*)

携帯のデータフォルダにも居座って頂いてるので

いつでも拝見できるんですよ♪


と、変態度が増さないうちにやめておきます。



ここまで読んで頂きありがとうございました!



最終更新日 2008/03/14