「好きだよ」と今日も言えないまま

見送った今まで一緒に居たのに

逢いたくて君の好きなうたを繰り返し口ずさんだ帰り道

 
「おはようございます」
 
そう俺に話しかけてきたのは三席の五十嵐 鈴だった
 
「はよ」


「今日も天気いいですね」


「そうだな」


「今日も一日頑張りましょうね」


「あぁ」

 
コイツと話してるとどうも上手く話せない

どうしてなのか…

それは俺自身が一番知っていた

 
「五十嵐」


「はい?」


「今日の夜空いてるか?」


「空いてますよ」


「食事でもしねーか?」


「いいですね!!」


「隊舎の前で待ち合わせでいいか?」


「もちろんです!ってそれしか待ち合わせするところないですよね。
 楽しみにしてますね。それでは後程」

 
鈴は笑顔でそう言うと、他の隊員と挨拶を交わす

他の奴にも俺と同じように笑顔で振舞う

その笑顔は俺だけに向けて欲しかった

 
話す声のトーン視線の先

他の誰かと交わす言葉さえ

些細な君の仕草が僕を惑わせる

答えがココでありますように

きっとずっと待った奇跡を起こるならここで

 
「隊長」


「…」


「隊長!」

 
乱菊の声にも反応しない冬獅郎

物思いに耽っていたせいだった

 
「…鈴のこと考えてたんですか?」


「バカ野郎。仕事しろ」


「隊長も筆進めて下さいよ。そんなに気になるならさっさと告白したらどうです?」


「うるせー」

 
「好きだよ」と居も言えないまま

見送った今まで一緒に居たのに

すぐに逢いたくて君の好きなうたを繰り返し口ずさんだ帰り道

 
この日も冬獅郎は仕事に身が入らなかった

ここ最近は冬獅郎自身らしくないと思っていた

しかし、自分の気持ちには嘘はつけないのだ

 
「お疲れ様です」
 
冬獅郎よりも先に鈴が隊舎の前で待っていた

いつものように笑顔で迎えてくれた

この笑顔が自分の物になったら…

何度もそう考えた

 
「今日も書類多くて大変でしたよね。隊長は私達よりもっと大変なんですよね?本当にご苦労様です」


「そうでもねーよ」


「隊長にとってはお安い御用なのかもしれませんね!私にとっては死ぬほど大変なんですけどね〜
 でも、隊長に食事誘われて嬉しかったですよ!沢山飲んで疲れもフッ飛ばしましょう!!」


「明日も仕事あんだろ」


「…。今夜はそんなこと考えちゃダメですよ!!楽しく過ごさないと損ですよ
 定刻丁度に帰れるなんて滅多にないんですから」


「そうだな」

 
偶然触れた手

君の体温さえ愛しくて

僕の全てを受け入れてくれる気がした

出会えたことで気付けたことが

僕を変えていく今まで以上に

 
歩いていると少しだけ触れた手からお互いの体温が伝わる

暖かい冬獅郎の手と

少し冷たい鈴の手…

思わず鈴の手を掴んでしまった

少しは驚いた鈴だったが、直ぐに笑顔が返ってきた

そして、鈴は冬獅郎の手を握り返した

 
「隊長の手暖かいですね」


「お前が冷てーんだよ」


「あっ、やっぱりそうですか?冷え性には酷な季節が訪れたんですよ」


「たくっ、暖めてやるよ...」


「ありがとうございます」

 
店に着くと鈴は早速熱燗を注文した

最初は余裕で飲んでいた鈴だったが、段々と酔いが回ったのか寝てしまった

「飲みすぎだ…」

冬獅郎は一人酒をすすめる

「…隊長…」

「?」

「無理…しないでください…」

「おまえもな」

 
鈴との出会いは丁度一年前だった

この時俺は一生恋などしないと決めていた

「日番谷隊長ここで何してるんですか?」


「・・・」


「あっ!本日十番隊に移動になりました五十嵐 鈴です」


「・・・」


「…どうかしたんですか?」


「・・・」


「って私に話してもどうしようもないですよね。でも、人に話すと少しは心が楽になるみたいですよ!
 なので、私でよければ何でも聞きますよ!」


「・・・」


「初対面の人に悩みを言うなんて普通しませんよね。ごちゃごちゃ言ってしまってごめんなさい。
 私はコレで失礼します」


「…好きな奴に振られた」


「…」

鈴は何を言うでもなく腕を大きく広げた

「失恋は辛いですよね。私も何度も経験してます...。聞いてくださいよ!この間なんて付き合ってた男の人
 が二股掛けてたのに別れ際に何て言ったと思います!?」


「さーな」


「『騙されるお前が悪い』ですって!!!人を馬鹿にするのもいい加減にして欲しいですよ!
 しかもこの男これで終わらなかったんですよ!!・・・って悩み聞いてもらってどうすんの私!!!
 ごめんなさい!!何か勝ってにペチャクチャ話してしまいまして」


「別に…それで?」


「それでですね、分かれて3日後その男が私の前に現れて『悪かった許してくれ。まだ俺のこと好きだよな?』
 ですって!だ〜れがそんな男をずっと好きでいられますかっての!
 その男に今までの不満全部ブチまけたらスッキリしたんですけどね」


「泣けよ…」


「えっ?」


「何で作り笑いしてんだよ」


「…作り笑いなんてしてなですよ」


「好きだったんだろ?その男」


「前は...ですけどね」


「辛かったんじゃねーのか?」

鈴の目からは溢れんばかりの涙が溜まっていた

俺が泣かせたようなもんだった

この時俺の体は勝手に反応して、鈴を抱きしめていた

コイツの泣き顔を見たくない

咄嗟にそう思った

 
もう二度と人を愛さないと

前の恋で俯いていた僕を

もう一度誰かの為に行きたいと思えた

この気持ちを伝えに行くよ

 
「五十嵐、帰るぞ」


「…うっ…」


「・・・大丈夫か?」


「はい。飲みすぎた…」


「全くだ」


「隊長飲んでました?」


「お前よりは飲んでねーよ」


「ですよね〜ι」

 
まともに歩けそうに無かったため冬獅郎は鈴を支えて帰ることになった
 
「ごめんなさい」


「たくっ、人間限度があんだろ」


「だって、久々に隊長と飲めたんですもん」

 
こいつにとっては何気ない言葉なのかもしれねーけど、

自惚れしたくなる言葉に聞こえるのは俺だけか?

 
「着いたぜ」


「ありがとうございます。また今度飲みに行きましょう!」


「あぁ。飲みすぎるなよ」


「気をつけます。隊長」


「どうした?」


「そう言えば今日市丸隊長がコレを日番谷隊長に渡しとくように言われたんですよ」

鈴は一通の文を冬獅郎に渡した

「早く渡せ」


「忘れてたんです…すみません」


「以後気をつけろ」


「はい」


「おやすみ」


「おやすみなさい」

 
なんだか俺は嫌な予感がした

今さっき鈴から貰った文を読む

「・・・」

それを見て言葉を失った

 
翌日俺はは鈴にあることを告げなくてはならなくなった

「五十嵐 鈴」


「はい」


「本日付で三番隊へ移動になった」


「…わかりました。一年間お世話になりました」


「あぁ...」


「ありがとうございました」


「…」


「…隊長?」


「?」


「また、いつか一緒に食事行きましょうね」


「あぁ…」

 
どこにいても

何をしてるときも

君のことが頭から離れない

教えてくれた

届かぬ辛さ

恋の切なさ

愛する喜びを

その笑顔も受話器ごしの声も

人ごみが苦手な小さなからだ

悪い癖も君にしかないもので輝いてる

全てが終わらぬように

僕の中で君を思うことが

明日を生きる力に変わってく

導きあえたなら

同じ歩幅で信じあえる道を歩いていこう

こんなにも君を思うだけで

苦しくて愛しさつのる気持ち

逢いたくて君の好きなうたを繰り返し口ずさんだ帰り道

 
☆―――★―――☆―――★―――☆
 〜あとがき〜

UVERworldの「君の好きなうた」でした

とっても切ないです(><。)

でも、とっても好きな歌です

CD出る前に書いたので歌詞が間違ってるかもしれません(オイッ

冬獅郎の片思い?

でもきっと両方伝えてないだけで両思いなんですよv

けれど、決して一つになることはないんです

悲しいけど、思われてるのは嬉しいな〜なんて…

ここまで読んで頂きありがとうございました

お手数ですがブラザバックでお戻り下さい

2008/03/06