俺はある女が好きで好きでたまんなかった。




「冬獅郎。おはよう」


「はよ…その格好…何してんだよ」






は綺麗な着物を着ていた



「カワイイでしょ?」



はクルリと一回転して見せた




「着物がな」




そう言いフッっと笑った



「ヒッドーイ」



は半笑いで訴えた



「冬獅郎に一番に見てもらおうと思ってきたんだからね!」

「瞬歩でか?」

「うん。抜け出して来た!って言わせないでヨ!!」



がポカスカと冬獅郎の頭を叩く。



「今日なんか有ったか?」







俺は何気なく聞いた…後で後悔することも知らずに…





「今日顔合わせなんだ〜」




はどこか寂しそうな表情をして言った。




「…そうか…」



俺の心にポッカリ穴が開いた気がした。




「何で私好きでない人と結婚しないといけないのカナ?私悪い事した?」



「…」




俺は何も言ってやれなかった





「…運命って…残酷だよね」





そう言った時俺はを抱きしめていた。




「ワリー…」



俺はそう言って放した




は笑って、



「冬獅郎だったら良かったのに…」



「?」



「許婚者、冬獅郎だったら良かったな〜」




はニコッっと笑い俺に封筒を渡した。




「…何だコレ?」

「結婚式の招待状。自分の手で渡したくて…」

…」

「んっ?」



俺は下を向いて


「悪い…行けねーかもしれねー…」


「そうだよね〜。冬獅郎忙しいもんね。仕方ないよ」

「悪いな…」

「いいよ。またね冬獅郎…」

「あぁ…」



俺はの後ろ姿を見送った。



「冬獅郎?」


「あっ?」


が振り向く



「…私冬獅郎のコト好きだよ」


と言って消えた


「…俺だって好きだぜ…」

そんな思いが届く筈もなく俺は呟いた…

運命とは儚いものだ…