食事も終わり会計…
その金額を見て驚くのも無理はない
そして、ギンが全額出したこの事実もは悪く思う

















 「私、払いますよ!」
 「ええて。ボクが誘ったんやし」
 「でも、こんな金額...」
 「大丈夫や。こう見えても結構金持ちなんやで?」
 「私の気が済みません!」
 「ちゃんも頑固やね。せや、今度奢ってくれへん?それでエエやん」
 「それじゃ、2・3回奢らせてもらいます」
 「一回でええて(苦笑)」
 「それじゃ、つり合いませんよ!私だって多少なりとお金持ってますから」













はニッコリと笑いギンを見た。
その笑いにギンは微笑んで諦めた











 
 「ほな、頼むわ」
 「はーい!」













ギンはを送って行く。
夜道は少しだけスリルを味わえるくらいの暗さ...
隣には以前とは違うギンの姿。
以前なら確実にの身が危うかっただろう。
だが、今はそんな心配はいらないくらいに優しい














 「ココでいいですよ」
 「大丈夫なん?」
 「直ぐそこですから」
 「気ぃつけや」
 「はい」
 「…ちゃん、ちょっと聞いてもええ?」
 
 「いいですよ。何ですか?」
 「もし、ボクが学校辞めてもうたら悲しんでくれはる?」
 「えっ?」
 「ボクがもし学校辞めてもうたらどうする?聞いてんのや」
 「…怒ります」
 「どないして怒るん!?」
 「だって嫌ですもん。市丸先生いなくなるのは。面白い先生消えたら誰だって嫌ですよ?」
 「ボクって面白いん?」
 「面白いというか変です」
 
 「それ軽く傷つくで」
 「ごめんなさい。でも、辞めないで下さいね」
 「…ありがとうな。ほな、気をつけて帰り」
 「市丸先生も気をつけて下さいね」

















ギンは背中を見せ手を振った。

先程の質問…
はあまり気に止めていなかった。
だが、頭のどこかでは引っかかっていたのかもしれない。














家の前に着くと見覚えのある制服を着ている少年がいた。
その少年はマンションの花壇の淵のレンガのところに腰を降ろしている。












 「斑目!?お前こんな時間にこんなとこで何やってんの!?」










はビックリした。
ふとはどのくらい待っていたのか気になった。
今の時刻は9時を回っていた。
一角とのマンツーマンの補講が終わって1時間半は経っている。








 「ほらよ」









一角はに携帯を渡した。










 「あ、ありがとう...」
 「そんじゃーな」
 「ちょっと!斑目、あんた何時から待ってたの!?」
 「あっ?知らねーよ」
 「知らないって…ι御袋さん心配してんじゃないの?」
 「今日は夜勤だからおせーんだよ」
 「あ〜そう。ご飯は?」
 「これから、コンビニ弁当でも買って食う」
 「だったら家で食べてく?」











一角は背中越しに話していたが、のその言葉を聞いて振り返った。












 「はぁ?」
 「あんたまだ夕食食べてないんでしょ?それに成長期の少年にコンビニ弁当なんて可哀想じゃん」











はニカッっと笑った。







 
 「それに、携帯届けてくれたし。そんで、どうすんの?」
 「お前飯作れんのか?」
 「全く、失礼な言い方してくれんじゃないの#」













は指をコキコキと鳴らした。
「ほら、行くよ!」
というと、はマンションの中に入りロックを解除して中へと入っていく。














 「ほんと、ここの生徒って失礼極まりないよね。
  私が料理できないなんて誰が言ったんだか、全く。
  超スペシャルな物作って『あっ!』っと言わしてやるから覚えとけ!!」
 「…」










は部屋に戻ると台所に立ち手際よく料理を始めた。
一角はにリビングでくつろぐように言われ、ソファーに座ってテレビを観ていた。
台所からは包丁で野菜を切る音が聞こえる。
暫くすると、トントントン...という音は止み、ジューっという音とともに食欲を誘う匂いがしてくる。












 「(…美味そうな匂いだな…)」










一角はチラリとの方を見た。
は鼻歌交じりに夕食作りに取り掛かっていた。











 「(…。にしても、こんなとこに一人とは贅沢してるぜ)」










一角は辺りを見渡した。
ココにずっといても飽きないような物が沢山あった。













 「(教師ってこんなに贅沢できる程給料貰ってんのか?)」










一角は自分の目の前にあるノートパソコンと少し離れたところにあるパソコンを見て思った。
いや、実際ここの部屋のあちこちの備品を見ると誰でもそう思うだろう。
















 「ほーい、出来たぞぉ〜!」













は出来上がった夕飯を一角の前のテーブルに出す。
今日の夕食は、照り焼きハンバーグと野菜炒め
それだけでも結構なボリュームがある。
作ったばかりで暖かいそれらからは湯気が立ち上っていた。
その湯気とともに照り焼きのソースの良い香りがする。








 「へぇ〜、見た目はちゃんとしてるな」
 「#だから、それ失礼だって!!味だっていけると思うよ?」
 「…いただきます」
 「おぅおぅ、食え食え!!」
 「お前食わねーのか?」
 「私はもう食べて来たからね」
 「(…市丸ってとこか?さっきメール何回か着てたみてーだし…)」













一角はあえて名前を出さなかった。
も悪口を言い出さないところからして何もなかったのだろう、とそう思ったからだ。
一口食べて美味いと思った。










 「どう?美味しい?」
 「あぁ、ウメー!」
 「ほらみろ!!私は何でも出来るんだよ!!コレでわかったか!?」
 「誰も、お前が料理下手だなんて言ってねーだろうが」
 「いや、あの文脈からすると遠まわしに私を料理できない人間だと思っていただろ!」
 「見たかんじ出来なさそうじゃねーか」
 「だから、失礼だって言ってんの!まー、取り敢えず冷めないうちに食べなよ」










は一角の反対側のソファーに座る。












 「こんな時間まで待ってることなかったのに」
 「…いいだろ別に」
 「あんた補導されるよ?」
 「鍵忘れたことにして待つ」
 「…そこまで考えてたのかい…」
 「いや。補導されたらされたでなんとかなるんじゃねーの?」
 「そりゃ、あんたより私が怒られるからあんたはいいでしょうね。
  補導されたらまた伊部の奴うるさいよ…。だから補導なんてされないように気をつけること!」











話が盛り上がることはなかったが、何気に楽しく会話をしていた二人
そんな時一角がある話を切り出した。










 「さっき、お前の携帯に着信あったぜ」
 「へっ?誰から?」
 「市丸から」
 「あぁ」
 「あと、公衆電話から…」
 「公衆電話?」
 「お前からだと思って取ったんだけどよ...」
 「誰からだった?」
 「・・・」
 「斑目?」













一角は視線を反らせた。














 

 

最終更新日 2008/03/05