俺はあの時の携帯に出た。






 「…はい」
 『はおるか?』
 「いや、いない」










誰だ…コイツ?
随分と偉そうな口調しやがる…











 『逃げたか...。貴様誰だ?』
 「...先生の生徒だ」







危うくと言いそうになった一角は間を取ってと言った。












 『まだ教師をしていたのか』




携帯の向こう側からは呆れた乾いた笑い声が聞こえてきた。







 「…(誰だよコイツ…)」
 『まー、よい。また連絡をつける...』















ツーツー…






















俺はアイツの声とあの独特の笑い方が頭から離れなかった。
とても嫌な気分にさせられる...そんな感じのものだ。



















 「ねー、ちょっと誰からなの?」









誰かと聞いて黙り込んでしまった一角に再度聞く。











 「知らねーよ。名前名乗ってなかったからな」
 「…何て言ってた?」
 「また連絡する...だとよ」
 「……どんな声だった………?」
 「なんつーか...不気味だったぜ」
 「…。斑目、今日はもう遅いし帰りな」










の表情が濁った。
一角はの顔を見たが、目が合うことはなかった。
そして、どこかピリピリとしたそんなオーラが出ている。
















 「下にタクシー手配しといたから、コレで乗れるから」








は一角にタクシー無料券(一回)を手渡す。
一角は遠慮せずにそれを受け取ると玄関へ行き、靴を履く。









 「携帯届けてくれてありがとうな」
 「…あぁ」
 「明日遅刻すんなよ」
 「わかってるよ…」
 「おやすみ…」
 「…」













一角はの部屋から出ると、ドアの前での部屋を一回見る。
何があったか...そんなことは知らないが、
のあの表情から言えることと言えばよくないこと...それくらいだ。
他人のことなのであまり深く考えないように、一角はマンションを出た。



















 「…寝よう」




はそう呟くと布団に入った。
































翌日、はいつもの通りに通勤した。









 

 「おぅ、!!今日は遅刻しねーんだな」







職員室に行くと早速、修兵にからかわれた。







 「そんな毎日遅刻してないですよ!」
 「そうか?イメージだとほぼ毎日遅刻だけどな」
 「…どんなイメージですか!?」















私のイメージって凄く悪くない!?
昨日の斑目にしても、料理できないと思ってたし…
何なんですかこの学校の生徒と教員は!!
人を傷つける教育でもされてんですか!?













 「お前昨日大丈夫だったか?」





少し心配そうに海燕が聞いてきた。
そう聞かれたは頭の上にクエッションマークを数個浮かべていた。







 「何が”大丈夫だったか?”なんですか?」
 「市丸との食事だよ」
 「大丈夫に決まってるじゃないですか!!そんな変なことがあって溜まりますか!?」
 「ならいいんだけどよ」
 「何か…海燕さん元気ないですか?」
 「あぁ?そうか?普通じゃねーの?」
 「そうですか?本人が言うならそうかもしれないですけど...」
 「心配してくれてサンキューな。でも、大丈夫だぜ」
 「無理しないで下さいね」
 「おぅ」
 「何かソコ...良い雰囲気作ってんな…」











少し面白くなさそうに修兵が嘆いた。










 「普通ですよ。それより修兵さん…」
 
 「あっ?」
 「私に湯のみを突き出さないで下さい」
 「お茶入れてくんねーかなって思ってよ」
 「自分で入れてくださいよ!私雑用係じゃないんですよ!?」
 「いいじゃねーの。男が入れるより女が入れる方が美味いに決まってんだろ?」
 「そうですか?変わりませんよね?」
 「いや、変わる。それに、ほらお前何しても美味く作れんじゃん。お前の入れたお茶は世界一だからな」
 「またまた〜」
 「マジだって。なー、海燕」
 「あぁ。うめーよ。お前の茶」











海燕はニッコシ笑って答えた。









 「えっと…じゃー淹れて来ますね!」








は修兵と海燕の湯のみを手に取るとお茶を淹れに行く。












 「お前もよくやるよな」
 「だって、うまいだろ?」
 「まーな」
 「そんで、お前大丈夫か?」
 「あぁ…何とかな」
 「さっさと風邪治せよ」
 「わかってるよ」
 「お待たせ〜」










がお茶を淹れて戻ってくる。










 「おっ、サンキュー♪」
 「ワリ」
 「どう致しまして。さー、今日も一日頑張りましょう!」









と言うと、は自分の教室へと向かう。



教室は騒がしかった
いつものことなのだが...











 「はーい、お前等座る!」







が中に入ると一斉にガタガタと音を立てて席へと着く。








 「起立、礼、着席」



で朝の挨拶を済ませ、連絡事項を伝える。








 「もう直ぐ期末テストあるからちゃんと勉強しておくように!
  因みに私のテスト難しいから。サボってる奴は赤点だと思った方が良いよ」
 「先生〜」
 「何だ山本?」
 「そんなに生徒苛めて楽しいですか?」
 「苛め?今までサボって楽してたのはあんたらだ。その付けが今形になって現れただけだろ?
  そういうのを何て言うか教えてやろうか?」
 「…」
 「自業自得。そんじゃ、私からも質問。そんなに教師苛めるのが楽しい?」
 「…えぇ、楽しいわよ」
 「あっそ。あんた性格悪いね。それじゃ、HR終わり」







はさっさと教室から出て行く。
教室に残っていたところで何もいからだ。
しいて言えば女子に憎まれ口言われるくらい?







真っ直ぐ職員室へと戻る。
そこでは「アレ?」っと思った。





 

 

最終更新日 2008/03/05