気付いたら、いつの間にか俺も寝ていた。

相変わらず俺の首にはコイツの腕が巻きついている。

…こんなおいしい起き方は久しぶりだな…

そう、俺にとってはおいしい起き方は初めてではない。

それは、初めてコイツの家に泊まったときのことだ

今でも忘れない…

それどころか鮮明に覚えている。

コイツが俺に…













 「..zZZ」









…したことを……



目の前で気持ちよさそうに寝ている俺の思い人…

そんな顔で寝てたら襲われんぞ

なんて思ってもコイツにはわかんねーんだろうな…

あの時お前がしたこと俺がしても…いいのか?














修兵は寝ているの口を見る。

そして徐々に息を殺してソレに自分のを近づける。

修兵の心臓の鼓動は通常の2倍は早く動いているだろう。

自分でも嫌になるようなこの緊張と胸の高鳴り…

唇が付くか付かないか...

そんな距離で修兵はその行動を制した。












バカか俺は…

こんなことして良いわけねーじゃねーか

だいたい、が嫌がんだろ

…頭冷やした方がいいな…








修兵は少し離れての顔を見て軽く微笑んだ。

は修兵の首に回していた腕に少し力を入れた。











 「!?」










当然修兵との距離は少しだけ縮まった。














 「しゅう…兵さん…」


 「?」


 「………おすわり」


 「・・・。」












心の奥底のほんの一部で「好き」という言葉を期待していた修兵…

その期待はまんまと裏切られた。

というよりも、に求める方がいけないのかもしれない (苦笑)















 「…んだよ...おすわりって…俺はお前のペットか?」


 「アレ?」








は目を覚ました。

それはもう「良く寝た」という感じの爽快感が目に映し出されていた。













 「よぉ、おはよう」


 「おはようございます…って何してるんですか…?…修兵さん」


 「覚えてねーのかよ」


 「はい。確か、市丸先生が二日酔いに効くっていう薬くれて、それ飲んだらものすご〜く眠くなって…
  気付いたらここにいました」


 「お前がそのあまりの眠たさに酔ってたから俺がここまで連れて来てやったんだよ」


 「あ、ありがとうございます…。ってごめんなさい!!」









は慌てて修兵の首から自分の腕を外す。

修兵は少し残念に思った。











 「別に構わなかったぜ。むしろ、そのまま…」

 
 「?………!?」








そんな時、グラッっと揺れが起きた。









 「「地震!?」」










結構大きな揺れが来た。

はドアを開けにベッドから立ち上がる。















 「!!危ねー!!!」

 「えっ?」












扉の横の棚の上にのっていたダンボールがその揺れで落ちてくる。







 「!?」







は反射的に目を瞑った。

その後、目の前は真っ暗となり、ガタンガタンというけたたましい音がした。

その時にはもう揺れは納まっていた。













 「しゅ...修兵さん!?」









の上には、庇うようにして覆いかぶさっている修兵がいた。

彼の額には少し汗が滲み、痛いのか顔を歪ませていた。












 「ケガ、ねーか?」


 「はい、でも修兵さんが!!」


 「俺は大丈夫だ…ッ…」








修兵は左肩を抑えた。












 「手当てしないと…」









は急いで修兵をベッドの上に座らせ、湿布を手に取る。












 「ごめんなさい…私不注意してたから…」


 「別に謝る必要なんてねーよ。ただ、俺がそうしたかっただけだ。
  それに、地震があったら扉を開ける、常識だろ?」


 「…」









そう言って笑う修兵にとても申し訳なさがあった。

修兵の赤く腫れた肩に湿布をそっと張ってやる。







 



 「サンキュー」


 「大丈夫ですか?」


 「あぁ、大したことねーよ。折れたわけでもねーし」


 「でも!」


 「大丈夫だ…」














修兵は自分を責めるを見て、動かしても支障が無い手でそっと自分の方へと抱き寄せる。













 「お前のせいじゃねーよ。だから気にすんな。そんじゃ、職員室にでも戻っか」


 「はい」










二人はドアの方に向かう。

そして、はそれに手を掛け開けようとした。

が、鈍い音がした









 「?」


 「どうした?」


 「アレ?」










は何度もガチャガチャと回しながら押したり引いたりしてみる。

しかし、ドアは一向に開く気配すらない。

修兵はそんなことあるわけないと、に代わり同様に開こうとするも無意味だった。












 「「・・・」」


 「閉じ込められた?」


 「みてーだな…」


 「えぇぇぇぇぇ!!??」


 「たくっ…あんくらいの揺れで開かなくなるってどういうことだよ…」









修兵はしょうがないといわんばかりにベッドに座る。

もため息を付きながらそうする。

















 「なんか…今日は付いてない日かもしれないですね」


 「あっ?」


 「二日酔いに地震、閉じ込めって…どう考えても運悪いですよ」


 「二日酔いは運じゃねーだろ? まっ、確かに閉じ込められるとは思わなかったな」


 「でも、あるい意味よかったかもしれないですよ」


 「あっ?」


 「こうして二人で修兵さんと話すの初めてですよね」


 「そうだな」










のその言葉聞いたら誰だって期待しちまうだろ?













 「修兵さんって海燕さんとずっと一緒なんですよね?」


 「あぁ。あいつとは昔から一緒だな。まー、気あうから嫌じゃねーけど」


 「いいな〜、って思うんですよ」


 「?」


 「何か羨ましいですよ!そういう関係」











はニッコリして言った。






コイツには心に穴が空いてんだよな…

誰にも話さねーし、そのことが辛くても辛いって表情に出さねーし

強がりすぎなんだよ、お前は…













 「お前はそういう奴いねーの?」


 「えっ?」


 「昔からのツレで、仲よくってさ、何でも話せるような奴」


 「いない、かな…あっ!でも兄貴はいますよ!」











コイツの言う兄貴、とは実の兄貴じゃねー。

だけど、は前にその兄貴だけが家族だって言ってたよな…

実の親は家族じゃねーのかよ…?

今日は俺もついてる、とは言えねー日なのかもしれねーけど(ケガしたし)

そうとも限らねーよな、コイツとこうして面と向かって話せるし。



俺はあの日のことを思い切って聞いてみようかと思った。

そう、にキスをされた日のことについて…

きっと覚えてねーんだろうけど、どういう反応するかちょっと見てみてーしな














 「なー、」


 「へっ?」


 「お前あの時俺にキス、したよな?」


 「えっ……?」
























 

最終更新日 2008/03/12